空洞化した情熱

 

空洞化した情熱

 

 

 

 番組制作を30年近くもやってこられたのは、相場のように刺激的な視聴率があったからだと思っている。裏切られた悲しみ、報われた悦び、悲喜こもごもが、ここまで仕事を続けさせてくれたと信じたい。

 

 情報系の週一レギュラー番組、しかも生放送を抱えているディレクターと先発ローテーションピッチャーは、どこか似ている。準備期間に5・6日を要する。いろいろ考え悩み準備した挙句に、放送時間と一試合を過ごせば、後は結果が問われるだけだ。善戦に数字が付いてこなかったり、結果が出なかったりは日常茶飯事。良きにつけ悪しきにつけ、連続した毎日であった。今にして、連鎖の中に現れた前線の中味が分っても手遅れか。

 

 5月28日、江尻は札幌円山球場開場70周年記念試合のマウンドに立っていた。セパ交流戦対ヤクルト5回戦の先発である。

 早くも、1回表。1アウトから2番青木、3番岩本、4番ラミレスに三連打され、1点を献上してしまった。5番DH鈴木健をダブルプレーに取って1アウト2塁・1塁のピンチをなんとか切り抜ける。

 

 2回表も6番ユウイチに死球、7番古田に2塁打(ライナー性の当りをライト森本が後逸)を許して、いとも簡単にピンチを招く。8番真中のセンターフライで2点目もあっさりと献上だ。続く9番白石の当たりは痛烈なレフトライナー。2塁ランナー古田が打球音と球足に釣られて帰塁出来ず、早くもこの日二つ目のダブルプレーだ。江尻にツキが味方した。

 

 コースに決まらない変化球を確実に見送って、ストレート一本に的を絞ってくるヤクルト打線。しかもヒットは快音だらけだ。3回表も1番宮本・2番青木の連打で始まる。3番岩本を三振に切ったのも束の間、4番ラミレス・5番DH鈴木・6番ユウイチに3連打を浴びて、この回は3点を剥奪されてしまった。2回1/3・5失点。今シーズン最短のノックアウト劇はあっけなく終幕した。

 

 巨人戦での7失点を一過性の不調とみなすには、この試合での5失点が重すぎる。プロ野球人生初の完投完封勝利をピークに、江尻に何かが起っていると見るべきだ。それを教えてくれたのが、マウンドを降りる江尻の無表情。そこに、そぎ落とされた集中力の残骸を見てしまった。

 

 バーンアウト!?たかだか一つの完封で燃え尽きてしまうものなのか。しかし、江尻が渇望し待ち望んだものの大きさは計れない。ただ、傍目には、1ショットの余韻に酔い痴れてスコアメイクを忘れてしまった愚かなゴルファーと同じに映るのだ。

 

 江尻よ。今の君は、空洞化した情熱を捧げ持つ憐れなピエロだ。この敗戦は劇的な勝利の反動であることを肝に命じよ。即ち、イーブン。快挙を帳消しにしてしまったのだ。新たな集中力を注入せよ。4勝3敗。次の登板ですべてが試される。

 

 心してゆけ・・・!!

 

東北朝日プロダクション  斎藤 茂

 

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