火達磨の今期初勝利-1

 

火達磨の今季初勝利

 

 

 

 キャッチャーの目線と同じ高さのスローVTRを見てつくづく思った。プロのピッチャーは余程コントロールを乱さない限り、バットが届く範囲にボールを投げてくる。当たり前と言えば当たり前のことだが、気持ちの持ちようでは、介錯人に首を差し出す死刑囚の心境に落ちることもあると思う。又、或る時は電気椅子のボタンを握る死刑執行人の立場もあろう。一球毎の気持ちの移ろいがどれ程勝負には無駄なことか。身に染みて分かっているから、ピッチャーと言う人種は概ね無表情を装う。

 

 

 4月2日、日本ハム・オリックス2回戦。楽天戦で惨めな降板劇を演じてしまった江尻にとっては、まさに背水の陣だ。やはりマウンド上では無表情。しかし、投球が猫のような臆病さを物語っていた。

 

 2回裏この回先頭の4番中村に投げた7球はすべて外角。結局四球で歩かせてしまった。7番北川にも外角一辺倒。2&2からの5球目、この日初めて内角に三振を取りに行ったフォークボールを痛打された。フェンス直撃のタイムリーヒット。

 

 

 3対1とリードを貰った3回裏の投球も変わらない。9番阿部、1番村松、2番平野を討ち取ったのはすべて外角球。平野のセカンドライナーは芯で捕らえられていた。

 

 4回裏。一転して猫のような臆病さが消える。3番谷から始まるクリーンアップに江尻の目の色が狡猾に光った。勝負球の外角球はすべてスライダー。同じ外角でも攻めの投球はこうも違うのか。気持ちの現れを見せて貰った。

 

 しかし、6対1のリードで迎えた5回裏。当然の如く、江尻は勝ち投手の権利に押し潰された。去年からの繰り返しだ。1アウトランナー2塁3塁でバッターは代打水口。思えばプロ初マウンドの江尻に初バッターとして容赦なくホームランを浴びせた、同門早稲田の先輩である。初球をサードライナー。江尻を救ったかに見えたが、続く1番村松がきっちりタイムリーヒットを放って、江尻の脆さを証明してくれた。

 

 

 毎度、同じ轍を踏む江尻をハム打線が援護する。6回表木元の3ラン、7回表にもセギノールの3ランで12対2と大量リードを奪う。完投で応えるしかない江尻だったが、魔の7回裏が待っていた。1アウトから8番日高に左中間を破られる。9番水口の鋭いライナーを名手新庄が後逸、これで1アウトランナー3塁1塁。バッターは前の打席でタイムリーヒットを放っている1番村松。0&1からの2球目だった。外角へ甘く入ったスライダーを見逃してくれる訳はない。ライトポール際を巻き込むように3ランを放って江尻を沈めた。

この日の江尻、6回1/3を投げて、球数106、被安打8、与四死球1、失点5と言う内容だった。今期初勝利を上げた内容とはとても思えない。

 

平成1842日 斉藤茂

 

ダウンロード
20060402火達磨の今期初勝利-1.pdf
Adobe Acrobat ドキュメント 15.5 KB