獅子身中の虫に泣いた江尻

 

獅子身中の虫に泣いた江尻

 

 

江尻の開幕が連載の始まりである。今年は意外に早くやってきた。

 

3月26日楽天2回戦。開幕投手金村に続き先発2番手は、ヒルマン監督の大抜擢と見るべきか、先発投手不足に泣くファイターズの現状と見るべきか、答えを出すのは江尻本人のはずだった。

 

1回表、楽天1番の鉄平に対する一球目はインサイドを抉る145キロのストレート。ボールの判定だったが、切れ球速ともに申し分なかった。

 

難なく2アウトを取った後、3番礒部への勝負球は外角へのスライダー。判定はボール。自信を持ってベンチに帰りかけた江尻の足を止めた。礒部、四球で1塁へ。4番フェルナンデスにレフト前ヒット、5番吉岡にまたもや四球。これで2アウト満塁。6番山崎の打ち損じに救われるが、礒部に選ばれた外角球、この一球で絶好調のままリズムに乗れるタイミングを逸してしまった。

 

先取点を貰った直後の2回表。1アウトから8番ルーキーの草野にプロ初安打を許す。ライト線の2ベースヒット。9番藤井にも左中間を二つに割られ、あっさりと同点に追いつかれてしまった。更に1番鉄平にも痛烈にライト前へ運ばれる。これで3連打だ。

 

調子そのものは決して悪くない。球種・コースを盗まれないように慎重にサインを出す、捕手高橋のテンポを放送席が指摘する。好調さに乗ってリズム良く投げたい江尻の気持ちがこれでは前に行けないと・・・。手綱を絞るのとはわけが違う。1アウト3塁1塁から2番沖原には注文通りの内野ゴロ。ダブルプレーはツキではない。それだけのことが出来る好調さを、この日の江尻は持っていた。

 

3対1とリードを貰った直後の3回表。3番礒部にはインコースの変化球から入った。2球目は外角高目のストレート。ボール球だが読まれていた。右中間を破られ、ノーアウト2塁のピンチ。4番フェルナンデスの当たりも痛烈。新庄の好捕に救われるが、好調さ故のジレンマに江尻の気持ちが続かない。5番吉岡のライト前ヒットで1アウト3塁1塁。6番山崎のライト犠牲フライで1点差に迫られてしまった。すでに許したヒットの数は7本、2点に抑えられているのが不思議なぐらいの試合展開だ。

 

更に、1アウトランナー1塁でバッターは7番リック。8本目のヒットがレフトフェンスを直撃したのを見て、ヒルマン監督がベンチを立ち上がった。

2回1/3、ヒルマン監督の温情と言えるのか、少なくとも非情ではない采配で江尻の開幕はあっけなく幕を閉じてしまった。

 

ファイターズはこの試合も5対2と取って開幕2連勝。チームのまずまずのスタートに江尻は救われたのだろうか。

フォア・ザ・チームに徹するよりも、我を出せ、欲を出せ江尻!絶好調のお前に本当の敵はいないのだ。

 

平成18327日 斉藤茂

 

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