勝利の為の過保護

 

勝利の為の過保護

 

 

 6勝目を飾った江尻だが、紙面を賑わすような活躍とは程遠かった。

 

 18・19号を放って気を吐いた新庄がお立ち台を回避し、無理やり駆り出されたヒーローインタビューも何処か空々しかった。まだまだ本来の出来ではないと、自分を戒めていたのだろう。

 

 味方打線の援護では、エース金村の数倍の恩恵を蒙っている。幾多の裏切りに耐えて居座ってくれる幸運には、感謝しても仕切れないはずだ。仙台での惨めなマウンドがあっただけに、如何にオリックス打線との巡り合せが幸運か、重量ソフトバンク打線との対戦を想像しただけでも、思い知らされる。

 

 7月8日対オリックス9回戦。復調の兆しが見える3番谷との対決に注目してみた。まず1回裏1アウト1塁の場面。危なげなくセンターフライに打ち取る。4回裏は1アウトからショートゴロに屠る。シュート回転のストレートが内角の甘いところに入ったが、谷の打ち損じに救われた。

 

 そして6回裏、この回先頭の8番阿部がライト前にヒットを放つ。1アウト後、1番村松の当りを自らの1塁ベースカバーの遅れで内野安打とし、ランナーは1塁・2塁。そして、2番平野に痛烈なレフト前タイムリーヒットを浴びた直後に、3番谷を打席に迎えた。1アウトでランナーは3塁・1塁。味方の大量援護で7点を貰っているとは言え、初失点を綺麗に許した後の嫌な場面だ。1打席目も2打席目も慎重に外角のボールから入った江尻が、初球から内角を狙った。打ち頃からストンと落ちるフォークボールにまんまと引っ掛かって、谷はセカンドフライに倒れる。旨みの投球が冴えを見せた。4番ブランボーへの2球目も内角へ。抜いたカーブでストライクを取りにいったところを、今度は狙い打たれた。センター前にゴロで運ばれ、2点目を許したところで交替となってしまった。

 

 内容的には3併殺を奪うなど、今までの投球には見られない狡猾さが出ていた。しかし、完投を期待できない江尻に対しベンチは5点リードのまま安全圏での継投策に踏み切ったのだ。

 

 終盤の山場をもうひと山切り抜けてこそ、今の江尻に活路が開けると見ている。チーム事情と言ってしまえばそれまでだが、結果的に過保護な投手交替が、江尻の成長の芽を摘んでいるのだ。

  

 結局、中継ぎが打たれ、終わってみれば10対7。5回を投げて勝投手の権利を得ていた江尻が6勝目に滑り込んだ。

 吉凶禍福はあざなえる縄の如し・・・。

 

運・不運を縄目の表と裏に喩えれば、いずれ、今の幸運も縄目の陰に隠れてしまう日が来よう。そう割り切って、次の輪廻をどう読むか。江尻よ!君に欠けているのは勝負師の魂だ。修羅場の中で掴み取って欲しい。

 

同じ7月8日、仙台二高48回卒の僚友、佐藤漸(ぜん)監督率いる聖和学園硬式野球部(3年前から共学)が、創部1年目で夏の高校野球宮城大会の初陣を飾った。都市対抗野球では、昨年七十七銀行を準決勝に導いた小河(おごう・同じ高48回卒)の活躍も聞こえてくることだろう。

 

東北朝日プロダクション  斉藤 茂

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