2オン1パットの価値

 

2オン1パットの価値

 

 

 綺麗に決まったものを、綺麗に決めようとするから事が運ばなくなるのだ。5月14日の対ベィスターズ戦での完封劇が江尻の今を苦しめている。

 

 結果の中に閉じ篭ったまま何をどう考えているのやら、再現を夢見ているとすれば愚かなことだ。しかし、その後の結果が、夢の瓦礫を積み上げるレンガ職人江尻の姿を冷酷に浮き彫りにしている。

 

 7月2日、フルキャストスタジアム宮城。対楽天7回戦の先発を任された江尻が、故郷のファンには控え目と思わせる挙措でマウンドに上がってきた。先頭バッター礒部が、その初球を叩く。あわやスタンド入りと思わせた打球をライト稲葉がフェンス際で好捕。故郷のファンに込めた思いが乗ってしまったように、正直で素直なストレートだった。

 

 3回裏。一番礒部にまたしても初球を叩かれる。ライト前ヒット。2番沖原にも1&1からの3球目をレフト線へ弾き返され、ノーアウトランナーは3塁2塁。3番吉岡のライトフライであっさり先取点を許してしまった。更に、4番山崎の1000本安打に貢献し、1アウトでランナーは尚3塁1塁。5番鷹野を何とかセカンドゴロゲットツゥーに取ってピンチを切り抜けた。

 

 セギノールの2ランで2対1と逆転して貰った直後の5回裏。3番吉岡・4番山崎の連打と5番鷹野への四球で、この日3度目の満塁のピンチをノーアウトで招いてしまった。誰の責任でもない、逆転して貰いながら不甲斐ない江尻の責任だ。6番代打ロペスが定石通り初球を叩いてレフト前ヒット。絵に描いたようなタイムリーヒットは明らかに江尻の逆球によるものだ。7番益田のセンターフライで逆転されたところで、ヒルマン監督がベンチを立った。

 

 打線は下位の8番・9番。8番の藤井には前の打席でヒットを打たれているものの、交替のタイミングとしては酷で、しかも中途半端だ。故郷のファンへの面子もあったはずだ。せめて5回までは投げさせて欲しかったと思いつつ冷静に振り返ってみれば、替え時に耐えていたのはむしろベンチの方なのだ。ロペスの同点打、益田の逆転犠牲フライまで待ってくれたのは、立ち直りを期待したヒルマン監督の温情と見るべきだろう。次回が背水の陣になることは、まず、間違いない。

 

 初先発でいきなり完封試合をやってのけた、元近鉄の華麗なアンダースロー佐々木修氏(朝日放送野球解説者)は「冷静に振り返られるまでに三ヶ月は掛かりましたよ」と言ってくれた。同じ投手出身で江尻の苦悩が手に取るように分かるのだろう。是非一度江尻には引き合わせたい人物である。

 

 が、江尻よ。それでも言いたい。プロであれば、受け流していい結果もある。完封劇はエキスだけ抜き取って受け流してしまえばいいのだ。

 

 2オン1パットの価値が如何ほどのものか分かった時に、目から鱗が落ちるようにスコアメイクの壷が見えてくると言う。我々にすれば生涯で一度経験出来るかどうかのハーフ36ではあるが、それでも2オン1パットの綺麗事に拘りを持ってしまうものだ。比べる訳ではないが、だかだかサンデーゴルファーと同じ悩みを抱えてしまっているお前がいじらしく思えてならない。結果は、おごったハムの二連敗。江尻に勝ち負けは付かなかった。楽天のチーム力と故郷のファンを見直してくれたことだろう。

 

東北朝日プロダクション  斉藤 茂

 

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