インサート!?は控え目に

 

インサート!?は控え目に

 

 

 インサートカット。野球中継などにおいて、ゲーム内容と直接の関係はなくとも、試合展開を暗示させる象徴的カットのことを言う。スタンドの応援団の表情はまさにその代表である。

 

 17年前の熱闘甲子園を担当した当時、岐阜県代表の県岐商が試合前に行っていたある種の儀式を知るところとなった。両翼の外野ポールの真下に右翼手と左翼手がそれぞれ清めの塩を盛ると言うもので、当時の監督さんにさっそく取材を申し込んだところ「天下の朝日さんが追っかける話題は他にもっとあるんじゃないですか」と一蹴されてしまった。

 

 そうまで言われて引き下がってもいられない。後は狙うしかなかった。甲子園の炎天下、一塁側と三塁側記者席に望遠レンズを装着したカメラを配し、試合前のベンチから出てくる選手を待つこと十数分。当時の取材テープ一本の収録時間(20分)内で何とか押えられたが、本番が余りの好ゲームで放送には使えずじまいに終わった。これも又インサートカットの運命である。

 

 高校時代の江尻のインサートには事欠かなかった。かしまし会(野球部母の会)なる応援団の中でも評判の美人だった母江尻のカットは何度抜いた(映すの意)ことか。ちょうど我々と同じ世代と記憶している。

 

 さて、肝心の江尻。6月25日福岡ヤフードームで行われたソフトバンク7回戦に先発するも、5回1/3で降板してしまった。

 1対1の同点で迎えた5回裏、ソフトバンクは8番宮地から始まる下位打線。3回・4回と、ソフトバンクの重量打線を三人ずつで切っていることを思えば、通過点のイニングだったはず。それがソフトバンク打線の凄まじい粘りの前にたじたじとなってしまった。

 

 8番宮地は7球を費やさせ四球で出塁。9番鳥越送りバント。1番大村が今度は11球も投げさせた末に是又四球を選ぶ。2番川崎の何でもない当りが、飛んだコースに助けられてセンター前へ抜けてしまった。これで2点目を献上。3番バティスタをセンターフライに取って、4番松中は警戒の余りカウントを悪くしての敬遠。1アウト満塁としたが、前の2打席を凡打に仕留めている5番城島との勝負に賭けた。城島のバットが2球目の外角球に素直に反応してしまう。1・2塁間をゴロで破られて、この回更に2点、4点目を喫したところでベンチからのタオルが入った。

 

 殊勲打の城島が、塁上で胸のネックレスに結びつけた結婚指輪に唇を寄せるシーンがインサートされていた。まるで、撮って下さいと言わんばかりのタイミングの良さに作為を感じる程だったが、パフォーマンスの存在感は充分に評価されていいと思う。打たれた江尻の表情があってこそ生かされたインサートカットだった。

 

 試合は延長11回の末、5対6のサヨナラ負け。江尻に勝ち負けはつかなかった。

 いずれ修羅場が江尻を強くしてくれる。7月初旬の楽天戦での投球には多いに期待がもてそうだ。

 

東北朝日プロダクション  斉藤 茂

 

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