完膚なきまでに・・・

 

完膚なきまでに・・・

 

 

 

 2004年近鉄の高村祐は2勝1敗の成績だった。2勝はいずれも日本ハムから挙げたもの。1992年パリーグ新人王(13勝)に輝き、通産81勝を挙げているベテランは今年楽天に新天地を求め、目下ファームのある山形で調整中である。今年2月、球団主催のイベントに訪れた際に取材する機会を得、江尻の事も含め野球談義に花を咲かせた。聞けば、8月初旬の札幌ドームの三連戦で直接対決はなかったものの前後してマウンドに上がっていたと言う。 

 

 ベテランの域に達している高村の話。バッティングカウントの時如何にボール球でゴロに打ち取るか、ダブルプレーが取れる場面で投球術の真価が問われると言う。それにはストライクゾーンを彷徨って打者の打ち気を誘い、ボールゾーンに沈んでくれる球筋(高村の場合はシンカー)を信じ切ることだときっぱり。 

 

 高村にもまして球種がある江尻、投球術の真価を問われる場面は、むしろ望むところだったはずだ。4月25日、札幌ドーム対ソフトバンク3回戦。3回表、この回先頭の宮地に右中間に痛打され、ノーアウトで2塁にランナーを背負った江尻は、続く大村にもライト前ヒットを許してしまう。ノーアウトランナー3塁・1塁でバッターは1番柴原。何でもありの場面だったが、最低でも外野フライ狙いの柴原に救われた。結果は3塁フライで1アウト。ランナーは依然3塁・1塁。ここは1点覚悟で内野ゴロゲッツー狙いのケース。が、1塁ランナー大村にあっさり走られてしまう。1塁ランナーを釘付けにしておくだけの執拗な狡猾さが日本ハム内野陣には欠けていた。2番本間の当りは注文通りの内野ゴロ。打ち取ったかに見えたが、1塁キャンバス寄りの打球をバックホームを焦ったセギノールが後逸、タイムリーエラーとなって2点を献上してしまった。 

 

 江尻の投球は好調そのものだった。2回表、5番城島にセンターオーバーのソロホームランを許すも、6番ズレータ、7番カブレラをきっちり連続三振に切って取る。攻撃の糸口を封じていただけに、セギノールのタイムリーエラーが飛び出すと、もう歯止めは効かなかった。がむしゃらに勝負に出て、3番バティスタに2ラン、4番松中にもソロホームランを浴びて万事休す。好調さ故の大量失点に泣いた。2回と1/3・6失点で降板。結果は10対1、今シーズン初めての黒星を喫してしまった。 

 

 次回登板は5月1日、札幌ドームでのオリックス戦が濃厚だ。好調だった江尻に立て直しは必要ない。むしろ、淡白な守りで江尻の足を引っ張った内野陣へのてこ入れが急務だろう。

 

若さ故に傷ついた傷心の江尻がどこまで己の傷を癒してくるか、不甲斐ない守備陣を背負って孤独な戦いを挑んだ江尻の投球に非難の声は上がらない。

 

東北朝日プロダクション 斎藤 茂

 

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